僕の音楽史(187)
「すげー!動いてるよ!」

マルティーノの教則ビデオで、初めて「動くマルティーノ」を目の当たりにして驚愕しましたが、もっと驚愕したのは、彼の解説する理論の中身でした。
「マイナー・コンバージョン・コンセプト」
これは僕が彼のフレーズ・コピーを必死にやっていて1987年に気がつき(僕の音楽史(141)を参照)、その後の布川さんのレッスンの時にも「何で理論のこと知らないのに弾けるの?」と聞かれ、ネタバラシをしなかった「世紀の大発見」、まさにそのものでしたw。
「やはりマルティーノはこう考えていたんだ!」
彼から教わったのではなく、自分で彼の演奏を研究して気がつき、それがことごとく当たっていたことに最大の喜びを感じました。彼の説明ははもう全て頭や体に叩き込まれていたものでしたが、このビデオを見ることでもう一つ上のステップに行けた気がします。
そして、彼のピッキング・フォームに僕はそっくりだったことも驚きで嬉しかったのです。僕は右手のフォームやピッキングにすごく悩んでいました。マルティーノの前にベンソンに入れ込んでいた時期もあって、あの逆アングルの「加速するピッキング」に憧れていました。ベンソンは「速い」だけでなく「加速」します。音符の速度がぐんぐん速くなり、たたみかけるように短い時間の中に詰め込んでくるのです。野球に例えると、「キャッチャーの手元に届く前に伸びる球」のような感じです。一方、マルティーノは速弾きは速弾きでも、ある一定の速度をキープし、加速することはありません。ただ、ひとつひとつのアタックが強靭です。これは、ベンソンのようにピックを指先でつまんで逆アングルで弾くことでは絶対得られないと思いました。
このビデオを見る前に彼のピッキング・スタイルを何枚かの写真と合わせて想像していました。マルティーノのアルバム「デスペラード」の裏ジャケットに、あの巨匠レスポールがマルティーノのピッキングについてこう書いていました。

”His picking style was absolutely unique.He held his pick as one would hold a demi-tasse.Pinky entended,very polite,"
「彼のピッキング・スタイルは大変ユニークなものだった。彼はまるでデミタスのコーヒーカップを握るような感じでピックを握っていた。小指がまっすぐ伸びていた」
僕にはクラッシックギターを弾いている時から右手に悪い癖がありました。それは「小指が伸びている」ことでした。変に力が入ってしまい、いつも先生に注意されていましたし、輪ゴムで隣の薬指と束ねることで直そうと試みましたが、一向に治りませんでした。ピックを持つようになっても、この癖は残ってしまっていました。
彼のピッキング・スタイルについてのレスポールの言葉を見て、もう癖を治す意味などないと思いましたし、彼と同じ癖があることに大きな喜びを感じました。
こうして出来上がった僕のピッキング・スタイルが、ビデオで見る彼の右手のフォームにかなり近かったのは最高の喜びでした。
こうして、パット・マルティーノは僕の中で「神」になりましたw。