僕の音楽史(146)
レッスンの時に布川さんが言います。
「武田君はバンドやんないの?やったほうが良いよ。今度さ、東工大の学園祭行かない?俺さ、ジャズ研のOBで顔出すからさ、一緒に行かない?」
確かにバンドはやってみたいなとは思っていましたが、一緒にやる音楽仲間がまるでいませんでした。以前にも書きましたが、ライトの同期は人数も少なく、OB達もビッグバンドで活動しているか、楽器をやめているかのどちらかでした。したがって、卒業してから布川さんとレッスンの時にデュオで弾く以外に、他人と一緒に演奏したことはありませんでした。
僕は東京工業大学のOBでも何でもなく少し図々しいとは思いましたし、人前で演奏するのも久しぶりのこともあって一旦は躊躇しましたが、またとない機会ですから一緒に遊びに行くことにしました。
学園祭の最終日、部室でのジャム・セッションの途中で布川さんと一緒に参加します。
「彼、武田君って言って、俺の生徒。まさにパット・マルティーノだからさ」
布川さんが演奏前にみんなに紹介してくれました。弾く前に随分とハードルを上げてくれたものです(笑)。
そのときのことはよーく覚えています。曲はステラをやりました。テーマを僕が弾き、そのままギターソロに突入です。布川さんがあんなこと言ったので、あえてマルティーノ節、16部音符で意識して弾いてやりました。
その後何曲か休んだ後、グリーン・ドルフィンをやりました。演奏直前にベース奏者がメンバーと簡単な会話を交わします。
「ずーとB♭ペダル、サビのG♭のとこだけD♭ペダルでやってみよう」
この辺がいかにも「ジャズ研らしいな」とそのとき感じました。こんなこと、ビッグバンドのメンバーと演奏する時はあり得ないことでした。
聴いてくれたジャズ研のみんながどう感じたがわかりませんが、たった数時間のセッションで得たものは大きかった気がします。
この時一緒に演奏したベーシストは、後に一緒にバンド活動することになるのですが、その時はそんな事思ってもみませんでした。
