僕の音楽史(145)
その後の布川さんのレッスンのことについてですが、3回目以降は理論的な解説は一切やらないことになりました。僕が理解できていないことに気づいて布川さんが止めた訳ではなく、僕からお願いしたわけでもなく、下のような感じだったかと思います。
3回目のレッスンでいつものように、布川さんが何かを解説し、僕がそれを聞いてていました。そんな中、僕が何気なく「There Will Never Be Another You」のテーマを弾きました。ちょうどジョージ・ベンソンの「Live at Sunday Afternoon」での演奏をコピーしていた頃だったからと記憶しています。
僕のテーマに布川さんが反応し、バッキングを始め、そしてそのままデュオに突入しました。最後まで演奏し終わって、布川さんが言います。
「面白いね」
こんな言葉をかけられてすごく嬉しかった記憶があります。布川さんよりもうまく弾けるわけもないですが、少なくてもやっていて「面白い」ってことは「練習相手」にはなっているってことですし、僕的には「褒め言葉」と思っていました。
そして、次回のレッスンからは理論的な解説を教則ビデオをみたいに行うのではなく、その場で演奏曲を決め、デュオ演奏をして、質問があれば演奏後にする、なければどんどん次の曲をやる、みたいなやり方に自然に変わりました。
まさしく、デュオ・ライブのような実践的なレッスンです。僕はいつもレッスンを生録していましたし、布川さんはそれを許してくれていました。レッスン後、プレイバックを聴き、あーすれば良かった、こーすれば良かったと反省したり、場合によっては布川さんの演奏をコピーしたりと、ものすごく勉強になっていました。当然のことながら、この数年間で飛躍的にジャズ・ギターが弾けるようになったと思っています。
このレッスン時の生録が4年余りでカセッットテープ数十本にもなりました。このカセットテープが現在は行方不明なのですが、今一番聴きたい録音の中の一つでもあります。
「ジャズギターの金字塔」という布川さんのベストセラー教則本がありますが、僕はこの素晴らしい教則本が出版される10年以上も前からこの本に書かれている解説については、布川さんから本人とデュオをすることで肌で感じ取っていました。

