僕の音楽史(143)
布川さんの最初の自宅レッスンのことについて書こうと思います。なぜか意外と記憶に残っています。
最寄駅に着いてから電話を入れ、布川さんの言われた通りに家に向かいましたが、ちょっと迷いました。
部屋に通され、簡単な挨拶を交わしました。布川さん本人に会うのはもちろん初めてだったのですが、ジャズライフの写真でよく見ていたので、初めてのような気はしませんでした。
音楽経歴を中心に色々と話しました。中学・高校とロックが好きだったこと、大学ではなぜかビッグバンドのサークルで活動していたこと、就職後は独学で練習していること.....などなど。
20分くらい色々な話をしたでしょうか、布川さんの方から
「スタンダードを何か演奏してみようか、何やる?ステラとかどう?」
あまり得意な曲ではなかったのですが、一応テーマは弾けるようになっていましたので、一緒に演奏します。
僕がテーマを弾き、布川さんがバッキングしてくれます。デュオでの演奏なんて生まれて初めてでした。でも、さすがに弾きやすかったです。
テーマを弾いてそのままソロに突入、その後布川さんがソロを弾き、テーマに戻って終了です。
なんとか弾き切りました。凄く緊張しました。正直、色々言われんだろうな?(笑)と思いました。
「武田君さ、そのくらい弾けるんなら何も教えることないよ(爆笑)」
「まさにパット・マルティーノだね!」
お世辞と思いましたが(笑)、ギター演奏で褒められたことはあまりなかった、と言うか人前で演奏することは大学以来初めてでそんな機会もなかったので凄く嬉しかったです。
「逆に何を教わりたいの?」
「アウトのフレーズです。僕もたまに弾いたりするんですが、理論的に理解して弾いてるわけじゃないんです。方法論が知りたいんです。」
その後、布川さん率いる「VALIS」のピットイン生録を聴かせてもらいました。今思うと「ビートパニック」だったと思います。
「なんかウェザー・リポートみたいなサウンドですね!」
こんなバンド、日本には無いと思いました。日本のフュージョンといえば、僕のイメージは「カシオペア」「スクエア」「プリズム」です。そのサウンドとはまるでかけ離れていてびっくりしました。
日本のフュージョンはほとんど「ギターバンド」です。ギターがテーマを取り、ソロをやり、難しいユニゾンを決め、それはかっこいいですし、ギタリストには大変魅力的でした。でも布川さんのサウンドはどれとも違っていました。テーマのメロディは比較的単調で親しみやすいのですがバックを支えるサウンドが構築された部分とラフな感じがミックスされたアカデミックなサウンドでびっくりでした。
そして、定期的にレッスンに通うことに決めました。
