僕の音楽史(120)
大学4年になりました。ライトのリズム隊のレギュラー・メンバーは総入れ替えとなりました。ベースはS君、ドラムはF君、ピアノはTさんになりました。みんな各々は上手でしたが、音楽性はバラバラでしたし、本来僕がまとめやくになるべきなのでしょうが、全くもってそんな手腕もありませんでしたし、興味の対象は自分のことだけでしたので、歴代の中ではあまりいい感じのリズム隊ではなかったと思います。
この当時僕はPat Metheny Groupのライブ・アルバム「トラベルズ」に夢中でした。

このアルバムを聴くまでは、僕の中でのパットのお気に入りは「アメリカン・ガレージ」でした。そのあと発売された「オフランプ」は「ジェイムス」以外はあまり好きにはなれませんでしたし、最初にブレイクしたアルバム「サンロレンツオ」もギターの音色が今に比べるとかなり深いディレイがかかっていて、あまり好きにはなれませんでした。また、当時メセニーは指でビブラートをかける癖があって、それがどうも気になってギタリストとしてはそんなに好きな感じではなく、どちらかというともっとオーソドックスなタイプのギター弾きをずっと研究していました。
それが、このライブ・アルバムを購入し、一変しました(笑)。「ついておいて」の何とカッコいいこと!スタジオ盤では通して聴いたこともないこの曲が自分に迫ってきます。そして、それに続く「ザ・フィールズ、ザ・スカイ」の素晴らしく歌うギターと圧倒的な構成力、「ストレート・オン・レッド」のライルの知的にノリノリのピアノ、「ソング・フォー・ビルバオ」の迫力、「ファーマーズ・トラスト」や「トラベルズ」の涙が出るほど美しいバラード、もうどの曲を聴いても感動モノでした。
このアルバムから、僕はパット・メセニーのフレーズ・コピーを始めました。当時は「ザ・フィールズ、ザ・スカイ」をコピーし、レコードと一緒に弾くことが快感で、毎日馬鹿の一つ覚えのように弾いていました。ただ、当然音楽理論もわからないですし、コード進行も採れない、そんなレベルでしたから、全く同じようには弾けましたが、逆にアドリブで弾くことなどは全然できない、ただの「猿真似」でした。
とにかく、ライトとして最後の年、さすがにこんな時期から卒業前のリサイタルの自分のフィーチャー曲のことを考えていたわけもありませんが、「上手くならなければ!」という思いが人一倍強く、他人の演奏やリズム隊のことなど考えている余裕はありませんでした。
申し訳なかったと思います。