僕の音楽史(102)
僕がレギュラーになって少し経った頃、ダンスパーティーの仕事の際にピアノの寺さんに突然声をかけられました。
「武田、1ステージと2ステージの合間にコンボで何曲か演奏するぞ。お前も一曲参加してみろ。曲は酒バラね」
ライトはビッグバンドですが、このようにピアノ、ベース、ドラムとフロントの何名かのピックアップ・メンバーで演奏したりすることがたまにありました。リズム隊のメンバーはそれを楽しみにしていたり、フルバンドに少し疲れた時の息抜きにしていたりしていたようです。
「酒バラ?!さーて、こまったぞ。」
コード進行はスタンダード本の譜面を見ればわかりますが、いかんせん、テーマは弾けないですし、アドリブも弾いた事はありません。当時の僕の演奏レベルは、こんなものでした。
「無理です!」
本当はそう言った方がよかったのかもしれませんが、そんな勇気もありません。
何曲かのコンボでの演奏のうち、「酒バラ」の時だけ僕は参加させてもらいました。
曲のキーがFなんで、とりあえずFのブルースペンタトニックばっかり弾いていたと思います。そして、1コーラスでリタイアしたと思います。どんなソロだったかはもちろん覚えてはいませんが、「その場から逃げ出したい」そんな気分であったことは、間違いありません。
寺さんやベースのタダシさん、ドラムの中村さんの楽しそうにソロ回しをしながら演奏している姿を見て、同じレギュラー・メンバーである以上「仲間に加わりたい!」と強く感じたのを今でも覚えています。彼らは僕の演奏に対しては何ひとつ文句は言いませんでしたが、こんな恥ずかしい気持ちを味わうのは、嫌でした。
これをきっかけに、大好きなギタリストのフレーズばかりコピーをするのではなく、スタンダードを覚え、弾けるようになることが先決と思いました。したがって、練習するスタンダード曲を決め、その曲を演奏しているギタリストを探し、レコードを片っぱしから買って研究するといったやり方に変えました。この結果、今までより色々なギタリストを研究することとなり、今考えるに、良い方向に向かって行ったのだと思います。
まずは、「酒バラ」をなんとかしようと思いました。そして、「酒バラ」を演奏しているギタリストのレコードを色々探します。
その結果、「僕の人生を変えた」と言っても過言ではない、あの人のあのレコードに巡り合うこととなるのです。
つづく!!
