僕の音楽史(83)
合宿中に「新入生いじり(いじめ?)」の恒例行事が行われました。「キーム」と呼ばれていて、その語源については....ここでは話しませんし、実際に語源になるような、そんな行動は少なくとも僕らの年代では起きませんでした(笑)。
新入部員はひとりづつ先輩達が飲んでいる部屋に順番に呼ばれ、1:Nで色んな質問、今の時代で言うと「パワハラ」「セクハラ」まがいの発言を浴びせられ、挙句の果て「キーム」の語源になるような事をされる.....そんな内容です(笑)。
その場で、僕は今後のギター人生に大きなモチベーションにつながるアドバイスを「寺さん」からいただいたのです。
何番目かに僕は先輩部屋に呼ばれました。そこにいた人達を正確には覚えていないのですが、以前書いたアルトの先輩「淳平」さんとその代の先輩達、そして問題の「寺さん」他5~6人が顔を真っ赤にしてニヤニヤしながら座ってます。
最初は「何でライトに入ったの?」「彼女はいるの?」とかそんな質問が続いたように思いますが、あんまり記憶に残っていないですし、どうでもいいような内容だったと思います。
どういうきっかけで次のような話になったのかは覚えてないですが、黙っていた「寺さん」がいきなり話し始めます。ここからは、比較的はっきり覚えてます。もっとも、本人はほぼ泥酔状態?のようでしたので、全く覚えていないと思いますが...。こっちはしらふです。
「武田はさぁー、ジャズは弾けないけど、ノリは良いよね。それは自信もっていいからさー。ジャズを聴いてないのに、あのノリで弾けるのは何か持ってるって事かもね」
「お前のジュニアの練習聴いたけどさ、ウェイブのソロ、Gm7-C7の繰り返しのところでE♭じゃなくてEの音をしきりに弾いてたろ?普通ジャズやったことないやつはGマイナーだからE♭弾くんだよ、でもお前はEを弾いていたな。」
最後にこう言われました。
「ウェスのユニット・セブンのソロの頭を聴け!あれなんだよ。」
最初の「ノリ」の話、これは本当に嬉しかったですね。いくら呂律の回らない状態の先輩の発言であってもです(笑)。ロックをやっている時、正直僕は皆から「凄いノリだな」「グイグイ引っ張るね」って褒められていましたが、ジャズをやる様になってからは、自分では少しわからなくなっていました。褒められたってことは、ロックもジャズも「自分の体に染みついてるまま弾けば良いんだ」という証明になりました。この時以来、実はノリと言うものについて僕は研究したり練習したりしたことはありません。自分を信じています。
二つ目の「E♭じゃなくEを弾く」、そして3つ目の「ウェスのユニット・セブン」の話、その時、実はそれほどピンと来ていませんでしたが、後の僕の音楽理論の大部分を占めるものとなる概念の糸口となるものでした。
E♭ではなくEを弾いていたのは、特に理由はなく、「E♭弾くとなんかどん臭い感じが、Eを弾くとなんかカッコイイと感じた」そんな程度の理由だったと思いますし、「ウェスのユニット・セブンのソロの頭」は実はまだ聴いていませんでした。
この寺さんの発言は、大学卒業後に「パット・マルティーノ」のプレイを研究しながら自力で「マイナー・コンバージョン・コンセプト」を発見した時に、初めて言っている意味がわかり、それをきっかけにその時点での断片が全てつながって、一つになったのです。
今振り返って感じるのは
「あの時言われたのは、こういう事だったのか?何でその時気がつかなかったんだろう!!」
「寺さん」がどこまで本気で言ったのかはわかりません。お世辞だったのかもしれませんし、いいかげんなアドバイスだったかもしれません(笑)。でも、そんな事はどうでも良くて、結果として寺さんの発言が、その後のギター人生の中で大きなモチベーションや自信につながっているわけですし、自分の中での断片的な音楽理論がつながるきっかけになった事実は変わらないわけですから。
こうして、僕の初めて夏合宿が終わりました。
※楽器をかじったことのない人はピンとこない話でしたね。この話は、何年か後に「マイナー・コンバージョン・コンセプト」を発見し、もやもやがつながった時の「震えるような喜び」の事を書くときにまた具体的にどういう事かを説明しますね!