僕の音楽史(81)
ライトは他の大学サークルと同様で夏と冬の年2回に合宿に行きます。その合宿はそれぞれ目的があって、夏は「山野ビックバンドコンテスト」に向けての強化練習、冬は3月に行われる「リサイタル」のための練習という事でした。数か月在籍していた感じでは「遊びに行く」感じではないことは容易に想像できましたが、ジュニア・バンドの先輩達からは色々と聞かされてはいました。
今振り返ってみると、この合宿前がライトを辞めるラスト・チャンスだったのかもしれません(笑)。夏合宿までのわずかばかりの練習のない休みで、少しづつ行くのが面倒になっていましたし、「秋山一将」さんのフレーズ・コピーを始めた頃でレギュラー練習にお付き合いする時間が正直もったいないと思っていました。
秋山さんを聴きこんでいくうちに、「ジョージ・ベンソン」とのフレーズの共通点をかなり見つけました。「秋山さんもベンソンの事を相当研究してるな?」と思いました。以前同期の川島君から録音してもらった「ブリージン」に合わせて、「イン・フライト」も録音してもらい、併せて徹底的にコピーを始めました。ただ、この時点での僕のギターレベルでは二人の速いパッセージなどは採譜不可能でしたし、たとえできたにしても弾くことはできませんでしたので、ゆっくりなテンポのフレーズを中心にコピーしていきました。

ライトのレギュラー・バンドの練習時に、ジュニア・バンドのメンバーはいつのころからか交代で「デンスケ番」ってのをやらされていました。
「デンスケ」
これは70年代に音楽に携わった人なら知っていると思いますが、ソニーの名器「カセット・デンスケ」のことです。

「デンスケ番」ってのは何をやるかって言うと、レギュラーの練習の時にこの「カセット・デンスケ」の前に座り、練習を逐一録音し、コンサート・マスター(以後コンマス)の指示のもとに「頭出し」をして「プレイバック再生」する係です。今の時代のデジタル録音ではありませんので、「一発頭出し」は出来ません。コンマスが皆に指示を与えている間に、メーターを「000」に合わせ、録音ボタンとポーズをかけて待機します。そして、演奏が始まると同時にポーズを解除して録音します。そして、コンマスが演奏を止めると同時に録音を止め、メーター「000」を目安にカセットの頭出しをして、コンマスのプレイバックの指示で再生・・・・。この繰り返しです。慣れるまでは録音に失敗したり、頭出しにまごついたりする事もあり、ひどく怒られました。
とにかく、こんな時間を無駄にしないためには、なんか意味を見出さなくてはいけませんので、以前も書きましたが、僕はこの機会に「レギュラー・メンバーの演奏の通信簿」を心の中でつけていました(笑)。練習の中で、セクションごとに何度も同じ箇所をやり直させられたり、時には放し飼い(一人でみんなの前で演奏させられること)になったりしていたので、全員の演奏を聴く絶好の機会でした。そして、「ジャズ」と「ジャズ以外」「ブラス・バンド」のノリの違いや「個々のインプロビゼーションの力量」などがよくわかりました。先輩達には失礼と思いましたが、こんな事でもやってないと、やる意味が見いだせなかったのです。
合宿が近づきました。ジュニア・バンドのバンド・マスターでもあり、レギュラー・ドラマーでもあるD年の中村さんが合宿初めての我々C年に合宿の注意事項を話します。
「写譜ペンを必ず持ってくること」
「写譜ペン???」