僕の音楽史(73)
ライトでの生活が始まりました。
入部前にはあまり意識していなかったことで、わかったことがありました。このバンドにはレギュラー・バンドとジュニア・バンドの2種類があるということです。要するに、レギュラーバンドのメンバーがオリエンテーションやコンサート、コンテストに出場するバンド、野球で言えば1軍で、ジュニア・バンドってのは2軍です。新入部員は2年間は全員必ずジュニア・バンドに所属しますが、レギュラーバンドは年功序列という訳ではありません。演奏の力量によってレギュラー・バンドに所属することになります。したがって、新入部員でも上手いやつは、ジュニア、レギュラーの両方のバンドに所属し、それぞれ両方の練習に出なくてはいけませんし、後に詳しく書くことになりますが、新入生のやる仕事も並行してやらなくてはいけないのでとても忙しいものとなります。
その時ライトにはギタリストのレギュラー・ポジションは一人のみ、一学年上の「カンタさん」という先輩がいました。明らか彼の方が上手いと自分でも感じていました。僕の一学年上ってことはどういうことになるかと言うと、実力的に彼を追い越さない限り4年までレギュラーは回ってきませんし、僕より上手いやつが入ってきたら、レギュラーにならないまま終わりということを意味します。普通ならやる気を失うところですが、僕は正直言うと「ラッキー!」と思いました。もともとライトで演奏しているようなビッグバンド・ジャズは好きでなかったですし、譜面に書かれているコードも難しすぎて全く弾けませんので、「個人練習して弾けるようになるまでレギュラーになんてならない方が気楽でいいや」と思ったからです。この頃は新入部員は10数名いたと思います。でも一か月もするとひとり辞めふたり辞め、結局のところ僕を含めて卒業まで残る5人にほぼ近い形になったと思います。
その中で「川島君」というトロンボーン奏者がいました。帰り道がずっと一緒だった関係で一番話す機会が多かったと思います。彼は中学、高校の頃からロックやフュージョンを随分と聴いていて、既にジャズも色々聴いていました。
「武田は普段何聴いてるの?」
「ジャズは全く聴いていない。とりあえず最近聴いてるのはカシオペアかな。サンダーライブだけだけど。」
「そうか?神保さんが入る前だけど、ファーストとセカンドを友人からレコード借りてるから録音してあげるよ」
そして、彼からカシオペアのファースト、セカンドのカセットテープをもらい、それを当時発売されたばかりのソニーのウォークマンで通学途中に毎日聴いていました。
サンダー・ライブでお気に入りの曲のスタジオテイクや「タイムリミット」「朝焼け」「テイク・ミー」などの名曲が収められていて、その後もずっと愛聴盤になりました。
この頃のカシオペアの野呂さんのギターは今でも大好きです。ステレオで鳴らすクリーント―ンやワイルドなディストーション、そしてジャジーなギターソロ、「フュージョンギターを弾けるようになりたい!でもなぜかジャズ・ビッグバンドに入ってしまった(笑)」自分には最高のお手本サウンドでした。
「ミッドナイト・ランデブーをレコードでかけながら、それに合わせてギターを弾く。でも、ブラック・ジョークは全く歯が立たない」
僕のギターレベルは当時はこんなもんでした。


