Pat Martino 奏法研究(17)
m7(♭5) (マイナーセブンフラットファイブ)は、今後解説を予定している7th(#9)と合わせてパットマルティーノのサウンドには欠かせない重要な響きです。ただ、ここでは特にそのことには触れず、マイナーコンバージョンの考え方の解説に留めます。
ここでは、キーCmを想定して、Ⅱ‐ⅤのⅡの部分、Dm7(♭5)で説明します。
皆さんはDm7(♭5)の押さえ方をいくつ知っていますか?コンテンポラリーな和声は別にして、通常のコードブックに書いてあるのは下の図1、図3、図5の3つです。この3つ知っていれば、ほぼOKと思います。
例によって、左と右の比較です。
【図1】のDm7(♭5)の赤丸(ルートのD音)以外は右【図2】のFmと同じですよね。サウンドも5,6弦を少し小さめの音で弾いてみてください。サウンドはほぼ同じ。したがって、Dm7(♭5)はFmに置き換えることができ、Fドリアンスケールでアドリブすることができます。
【図3】のDm7(♭5)に6弦13フレットのF音(図4赤丸)を付け加えてみてください。これって、Fm6ですよね。したがって、Dm7(♭5)はFm6に置き換えることができ、Fドリアンスケールでアドリブすることができます。
【図5】のDm7(♭5)のルート5弦5フレットD音を6弦6フレットのB♭に置き換えてみてください。【図6】のB♭7になります。このコード、ジャズ系の人はあまり使わないかもしれませんね。ブルース系の人はよく使いますよね。ブルースの1~2小節目は大概このコードですね。そうそう、ちょっと古いですが「ジェフズブギー」の出だしです。そして、【2-1】で解説した通り、B♭7⇒Fm7なので、結果的にDm7(♭5)はFm7に置き換えることができ、Fドリアンスケールでアドリブすることができます。
「m7(♭5)はロクリアンスケールを使ってアドリブする」と書いてありますよね。下に、Dロクリアンスケールを書いておきます。(a)のようにD音から始めればDロクリアンスケールですが、(b)のようにF音から始めれば、Fドリアンスケール。要は、理論書と僕は結局同じことを言っていて、ただどう理解するかだけの違いなのです。


【補足1】
m7(♭5)で挫折する人も多いと思います。なぜなら、ロックギターから入った人には全くなじみがないコードだからです。僕もロックからフュージョンに移行していくあたりで、どう弾いていいか全くわかりませんでした。理論書を見ると、「ロクリアンスケール」で弾くと書いてあります。イオニアン、ドリアン、フリジアン・・・スケールの頭文字をとって「C・D・E・F・G・A・B」にあてはめて順番に「イ・ド・フ・リ・ミ・エ・ロ」と呪文のように唱えて暗記しました。そして、イオニアンから順番にギターで弾いて、スケールを指に覚え込ませようとしました。でも、ロクリアンが出てくるのは、一番最後です。挫折しました(笑)。
【補足2】
Dm7-G7-Em7-A7、いわゆるⅡ-Ⅴ-Ⅲ-ⅥのときもDm7をDm7(♭5)と、Em7をEm7(♭5)と考えて、それぞれFドリアン(Fマイナー)、Gドリアン(Gマイナー)を弾くと結構「ジャズっぽく」なるかもしれません。ただ、その逆で、譜面にDm7(♭5)と書いてあるものを、Dm7と考えてDドリアンを弾くのは少し注意が必要です。Dm7(♭5)の特徴的な音♭5音(A♭)がDドリアンにはなく、A音だからです。少し違和感もあり、えっ?!て感じになります。でも、マルティーノは、逆にそれを多用し、効果的に使っています。