僕の音楽史(60)
友人の新保君も僕と同様ロックを聴きながらもクロスオーバー・ミュージックに傾倒していきました。僕の音楽趣向は結構偏っていたり、こだわりが強かったりしている半面、彼は比較的柔軟で、新しいものや良いものはこだわりなく聴いていく、極めてフラットな感覚の持ち主でした。大抵は彼が新しいレコードを聴かせてくれて、僕がそれに対してボロクソ言う。その後、改めて良さを認識するみたいな感じで、とっても嫌な奴でした(笑)。違うクラスになったこともあって、学校で話す機会はなくなりましたが、受験勉強に身が入らなくなると電話をかけ、たまに彼の自宅に遊びに行ったり、家に誘ったりして交流は続けていました。
彼の家にお邪魔した時のことです。
「面白いレコードを買ったぞ!」
下の写真のレコードでした。

「誰、これ?アル・ディ・・・・?何人?ダンサーみてーな名前だな?ルックスもイマイチだし。」
俺は聴く前からもう散々な酷評であります。
「この曲、聴いてみろよ!」
「ん?!スペイン高速悪魔との死闘? はー?!、子供映画のタイトルじゃないんだからさー!!」
曲が始まります。「なーんだ、ロックじゃん、通りいっぺんのキメだな。」
そして、スパニッシュ・モードでの例の早弾きが耳にと飛び込んできました。
「はっはっはっはっは・・・・」
笑いが止まりません。タイトル通りです。そして、彼に言いました。
「もう、いいや。止めて!」
その後何年か経って、スーパー・ギター・トリオ(?)などでブームとなるまで、彼の事は一度も聴きませんでした(笑)。
「じゃあ、これならどうだ」
それが、下の写真のレコードです。

「この曲のギター・ソロ、歌っていて最高なんだよ。ギターの音もな!」
当然、聴かせてくれたのは1曲目の「ルーム335」です。
「なにこれ、イントロにストリングスが入っているじゃん?」
僕的にはこれだけで実はもうNGでした。
「まー、最後まで聴け!」
確かに彼の言う通り素晴らしいプレイであることはわかりましたが、当時の僕にはあまり正直グッと来なかったのです。
こう考えていました。
カールトンの音、あれは「ロックの音」。だったら、「クロスオーバーをやらずにロックをやれ」です。
なんというステレオタイプな発想。実は今も大した変わっちゃいませんが(笑)。
フュージョン時代の名盤中の名盤2枚を捕まえて、こんな感じでした(笑)。もちろん彼ら二人、特にラリー・カールトンは散々聴くことになっていくのですが、僕のようなステレオタイプな人間の頭の中が切り替わっていくのには結構時間がかかりました(笑)。