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僕の音楽史(56)

【高校2年生(1978〜79年)】

 親友新保君とジェフ・ベックの武道館ライブを観るため新潟から上京しました。どのようにして武道館までやってきて、そして帰ったのかは全く記憶がなかったのですが、彼はしっかりと覚えていました。僕の方はそれを聞いても全く思い出せません(汗)。但し、音の方は鮮明に覚えています。

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 この日僕は叔父さんからソニーの名器(カセットデンスケ)を借りて、カバンの中に入れて会場に持ち込みました。すみません・・・・・。どうしても後で演奏が聴きたかったからです。

 曲については下の写真(数年のちに発売されたブートレッグ版)を拡大していただければお分かりの様に「ブロウ・バイ・ブロウ」「ワイアード」「ライブワイアー」そしてスタンリーとのコラボ・アルバムからの選曲でした。数あるジェフの来日公演の中でも最高の選曲の時代ではなかったかと思います。

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 僕の記憶が正しければ、座席は2階席の正面に向かって左側だったと思います。ステージからは結構遠くて、ジェフのプレイの細部は見えるような場所ではなかったのですが、そんな事はどうでも良い、そのくらい印象に残るコンサートでした。

 照明が落ち、真っ暗になった後、いきなりスポットがステージに当たり、ジェフの姿が現れます。

 「あれ、レスポール??」と思ったのもつかの間、聴いたこともないような音がギターから飛び出してきます。

 「まさかヤン・ハーマーがいる???」

 なんとジェフが持っていたのは、GR-500(?)初期のギターシンセサイザーでしたが、もちろんその時は知る由もありませんでした。

 「あ、これ、ライブ・ワイヤーのハーマーの曲だ!」

 一人で数分程ギターシンセでプレイの後、続けて当時は未発表の「ゼア・アンド・バック」から「スター・サイクル」に突入です。ピアノのイントロからキメの部分でスタンリー以下全員の大音量!ここで照明がステージ全体を照らし、一気に四人の姿が目に飛び込んできます。

 この時点、演奏が始まってたったの数分でもう魂を抜かれてしまいました。続いて名曲「フリーウェイ・ジャム」と続きます。スタンリーとドラムスのサイモン・フィリップスのリズム隊のせいか、今までのフリーウェイとはまた違った感じです。でも例のピッキング・ハーモニックスはばっちり決めてくれます。

 こんな調子でコンサートは休みなく続いていくのですが、特に印象深かったのは、「グッド・バイ・ポーク・パイハット」や「哀しみの恋人たち」といったバラード・プレイでのダイナミックス、そして聴いたこともないくらい高速の「スキャッターブレイン」でした。

 以前にも書きましたが、この時点ではまだ偉大なベーシスト「スタンリー・クラーク」の事は知りませんでした。生演奏を聴いて、今までのベーシストとはちょっと違うなとも思いましたが、正直、僕的にはベーシストは誰でも良かったのです(笑)。むしろ「ジェフの邪魔するなよ!」と思ったりした瞬間もありました(笑)。

 後日、某ジャズ雑誌にこの日のコンサート評でこんな事が書いてありました。

 「ジェフ・ベックの演奏は素晴らしかったが、偉大なベーシスト、スタンリーの強力なグルーブの前には防戦一方だった」

 正確な文章は覚えていませんが、こんなニュアンスの事だったように記憶しています。

 「くだらない!」と思いました。そして、高校生の僕にはジャズの批評家の方たちは「ジャズがロックに負けるわけにはいかないと感じているのかな?」と思えました。少なくとも演奏しているジェフとスタンリーは「異種格闘技戦」を存分に楽しんでいるように見えました。

 このコンサート以来、またロックに気持ちが戻ってしまいました。

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非公開コメント

武田先生、素晴らしい文章ですね!
おかげで、あの夜のライブをかなり鮮明に思い出しました。
僕は特に印象に残ったのは、グッバイ・ポーク・パイ・ハットでのバラードプレイでした。素晴らしかったです。たとえジャズの曲を弾いても、一聴してジェフ、と分かるスタイルが揺らがないのがジェフベックの偉大なところですね。
文中のジャズ批評のくだりには笑ってしまいました。僕もだいぶ後にジャズしか聴かなかった日々が十数年ありましたが、呆れたのは日本でのジャズ批評の下らなさです。日本にジャズが根付かなかったのは、音楽が分からない評論家のせいだと思ってます。まぁジャンル分けにはあまり意味はないですが。

Re: タイトルなし

新保君どうもです!

あらためて考えると、ベックの最高の時代の一つだったね。本当に観ておいてよかったよ。演奏以外の事をはっきり覚えていないが、「行こうぜ!」と言い出しっぺは新保の方だと思う。俺は正直そこまでのベック・ファンじゃなかったと思うから。

俺はゼア&バック以降ベックの歴史には疎くなってしまうし、後にも先のも彼のライブはこれが最後。

まだまだ、面白いネタが続くよ。

あっ、あと俺が忘れてそうなネタあったら、個人的にメールで送っておいてくれ。ここには書かないでね、ネタバレになってしまうから(笑)!

> 武田先生、素晴らしい文章ですね!
> おかげで、あの夜のライブをかなり鮮明に思い出しました。
> 僕は特に印象に残ったのは、グッバイ・ポーク・パイ・ハットでのバラードプレイでした。素晴らしかったです。たとえジャズの曲を弾いても、一聴してジェフ、と分かるスタイルが揺らがないのがジェフベックの偉大なところですね。
> 文中のジャズ批評のくだりには笑ってしまいました。僕もだいぶ後にジャズしか聴かなかった日々が十数年ありましたが、呆れたのは日本でのジャズ批評の下らなさです。日本にジャズが根付かなかったのは、音楽が分からない評論家のせいだと思ってます。まぁジャンル分けにはあまり意味はないですが。
プロフィール

武田 謙治

Author:武田 謙治
1962年生まれ 新潟県出身
小4よりクラシックギターを始める。
中学~高校時代はロック、フュージョンに傾倒。
慶應義塾大学入学と同時に、慶應ライトミュージックソサェティに所属し、ジャズの演奏を始める。
卒業後は、働きながら音楽活動を継続し、ジャズギタリスト布川俊樹氏に4年間師事。その後、自己のバンドで各種コンテストに参加する。
【主な受賞歴】
浅草JAZZコンテスト グランプリ受賞
吉祥寺JAZZコンテスト グランプリ受賞
横浜JAZZプロムナード '94 コンペティショングランプリ受賞 横浜市民賞受賞
キングレコード「日本ジャズ維新塾」 グランプリ受賞 岡安芳明賞受賞
 
1990年代は精力的に活動をしていたが、2000年に入り、十数年の間活動休止。その後は2014年夏より活動を再開。
現在は、都内を中心に、「日本一ギターのうまいサラリーマン」を目標にライブや講師として活動中。


【ギター教えます】
 僕は有名ミュージシャンではないですが、ずっと独学でやってきて「ジャズのアドリブが全くできない」とか「そこそこ弾けるようにはなったが、なんかジャズっぽくないなー」など、自分のギター・プレイに不満な方や伸び悩んでいる方の気持ちは一番わかっているつもりですし、そんな方達の手助けができるかなーと感じています。また、このブログで連載している「Pat Martino奏法研究」等について「もっと詳しく教えてほしい!」とか「一週間に一回ペースの小出しでなく、時間をかけてじっくり教えてほしい」みたいな人にも力になれるかな?と思ってます。

 東京都杉並区に住んでいますので、通える方は僕の自宅、遠方の方や通うのは大変という方にはリモートでも教えています。レッスン内容や頻度は生徒の方々の希望に合わせて決めています。

 興味のある方はメールやメッセージ、もしくはブログのコメント送信等どんなやり方でも良いのでご連絡くだされば詳細をお伝えいたします。

 それではお待ちしています!!

Mail : rymk.takeda@gmail.com

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