【はじめに】
今まで書いてきた「Pat Martino奏法研究」と「マイナー・コンバージョン・コンセプト」を一つにまとめ、「Pat Martino奏法研究【完全版】」として新たな講座をスタートさせることにしようと思います。今まで思いつきで書き始め、途中から2本だてにしたりしましたが、2つの講座の位置付けが曖昧だったので、整理・統合しようと思います。また、先の話にはなりますが、ここ数ヶ月研究している彼のソロ・ギターの解説もしていきます。最初の方は特に目新しい内容は登場しませんが、以前よりはわかりやすい書き方を心がけようと思います。また、後半は今まで解説してこなかったことについても言及していきます。あと、どちらかというと「ギター奏法」や「フレーズ」に重きを置いて解説し、マイナー・コンバージョン等の理論や概念は必要最小限にとどめようと思います。したがって、中級〜上級者向けの内容になることをご容赦ください。それでは早速始めます。
【The Basic Concept】
多くの演奏家は個々のコードに対して、それにあてはまる特定のスケールやモードを選択して演奏します。一方、マルティーノはマイナー・コードやポジションに置き換えて(マイナー・コンバージョン)演奏します。例えばドミナント7thコード上でインプロバイズする時、彼は「5度上のマイナー」を単純に考えています。例えばF7だったら、Cm7と考えているわけです。
そしてマイナー7thに置き換えた場合、彼はドリアン・スケールを選択することが極めて多く、Cm7の場合でいうとCドリアン(C,DE♭,F,G,A,B♭)です。一方置き換える前のドミナント7thであるF7は一般的にはFミクソリディアンを使用することが多く、これは F,G,A,B♭,C,D,E♭で置き換える前のCドリアンと全く同じ音なのです。
この例ではドミナント7thについて言及しましたが、ほぼ全てのコードと言って良いほど彼はドリアン・スケールに置き換えてインプロバイズするのです。
同じことなのになぜわざわざ置き換えるのかは「簡素化」が目的であり、これには「ギターという楽器の特性」も大きく関係しているのだと考えられます。例えばCドリアンとD♭ドリアン、ピアノでそれぞれを弾くと黒鍵の関係もあって運指は大きく違ってきます(白鍵・黒鍵の順番が違ってきます)。したがって、スケール上のひとつひとつの音名を把握していないと簡単には弾けません。でも、ギターは指板上を平行移動するだけでD♭に限らず12キーが一つの運指で弾けてしまうわけです。そして、全てをマイナー7thに置き換えれば、極端な話、ドリアン・スケールの運指一つ覚えればなんでも弾けてしまうことになります。
【フレーズの特徴】
まずは下の動画2つを確認ください。
どちらもCm7上のプレイなのですが、これから解説していく「パット・マルティーノ奏法」というのは2番目の動画のようなプレイを言います。Cドリアン・スケールをベースにクロマチック・ノートやパッシング・ノートを使った長尺で流れるようなフレージングのことを言います。
次回からはこのようなフレーズを弾くための基礎的な技術習得のための練習について解説していきます。
テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽