【高校2年生(1978〜79年)】 親友新保君とジェフ・ベックの武道館ライブを観るため新潟から上京しました。どのようにして武道館までやってきて、そして帰ったのかは全く記憶がなかったのですが、彼はしっかりと覚えていました。僕の方はそれを聞いても全く思い出せません(汗)。但し、音の方は鮮明に覚えています。

この日僕は叔父さんからソニーの名器(カセットデンスケ)を借りて、カバンの中に入れて会場に持ち込みました。すみません・・・・・。どうしても後で演奏が聴きたかったからです。
曲については下の写真(数年のちに発売されたブートレッグ版)を拡大していただければお分かりの様に「ブロウ・バイ・ブロウ」「ワイアード」「ライブワイアー」そしてスタンリーとのコラボ・アルバムからの選曲でした。数あるジェフの来日公演の中でも最高の選曲の時代ではなかったかと思います。

僕の記憶が正しければ、座席は2階席の正面に向かって左側だったと思います。ステージからは結構遠くて、ジェフのプレイの細部は見えるような場所ではなかったのですが、そんな事はどうでも良い、そのくらい印象に残るコンサートでした。
照明が落ち、真っ暗になった後、いきなりスポットがステージに当たり、ジェフの姿が現れます。
「あれ、レスポール??」と思ったのもつかの間、聴いたこともないような音がギターから飛び出してきます。
「まさかヤン・ハーマーがいる???」
なんとジェフが持っていたのは、GR-500(?)初期のギターシンセサイザーでしたが、もちろんその時は知る由もありませんでした。
「あ、これ、ライブ・ワイヤーのハーマーの曲だ!」
一人で数分程ギターシンセでプレイの後、続けて当時は未発表の「ゼア・アンド・バック」から「スター・サイクル」に突入です。ピアノのイントロからキメの部分でスタンリー以下全員の大音量!ここで照明がステージ全体を照らし、一気に四人の姿が目に飛び込んできます。
この時点、演奏が始まってたったの数分でもう魂を抜かれてしまいました。続いて名曲「フリーウェイ・ジャム」と続きます。スタンリーとドラムスのサイモン・フィリップスのリズム隊のせいか、今までのフリーウェイとはまた違った感じです。でも例のピッキング・ハーモニックスはばっちり決めてくれます。
こんな調子でコンサートは休みなく続いていくのですが、特に印象深かったのは、「グッド・バイ・ポーク・パイハット」や「哀しみの恋人たち」といったバラード・プレイでのダイナミックス、そして聴いたこともないくらい高速の「スキャッターブレイン」でした。
以前にも書きましたが、この時点ではまだ偉大なベーシスト「スタンリー・クラーク」の事は知りませんでした。生演奏を聴いて、今までのベーシストとはちょっと違うなとも思いましたが、正直、僕的にはベーシストは誰でも良かったのです(笑)。むしろ「ジェフの邪魔するなよ!」と思ったりした瞬間もありました(笑)。
後日、某ジャズ雑誌にこの日のコンサート評でこんな事が書いてありました。
「ジェフ・ベックの演奏は素晴らしかったが、偉大なベーシスト、スタンリーの強力なグルーブの前には防戦一方だった」
正確な文章は覚えていませんが、こんなニュアンスの事だったように記憶しています。
「くだらない!」と思いました。そして、高校生の僕にはジャズの批評家の方たちは「ジャズがロックに負けるわけにはいかないと感じているのかな?」と思えました。少なくとも演奏しているジェフとスタンリーは「異種格闘技戦」を存分に楽しんでいるように見えました。
このコンサート以来、またロックに気持ちが戻ってしまいました。