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Pat Martino奏法研究(67)

【第8章】 特徴的なフレーズ(1)

 今回からはマルティーノの特徴的なフレーズや音使いについていくつか紹介していきます。

 まずは下の譜面のご覧ください。

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上の2小節を弾いたのが下の動画ですね。ゆっくりと3回くらい弾いています。すみません、譜面にコードがふってませんでしたが、1小節目がEm7、2小節目がA7です。キーがCの時のⅢ-Ⅵ、Em7-A7(-Dm7-G7-C)部分の定石フレーズです。ジャズをかじった人ならどんな楽器の人も使うお決まりのフレーズですから皆さんも「あー、このフレーズね」って感じでご存知ですよね。



 さて、パットもこのフレーズ、特に初期の頃はよく使っていましたが、コピーして一緒に弾いてみると「あれ?!」ちょっとだけ音使いが違うことに気が付きました。音をしっかりと取ってみると、どうやら彼は下の段の譜面のように弾いていることがわかりました。動画を見てください。




 違いは2か所です。

 1小節目の1~2拍目、パットはEからではなくD♯から始めてGまではクロマチックで、すべて8分音符で埋めます。「淀みない8分音符」が売りですから、まー理解できます。

 問題は2か所目、うっかりしていると気が付かないくらいですが、2小節目の1~2拍ですが、一般的には上段のフレーズの様に「C#-E-G-A」と弾きます。これはⅥ7の箇所、A7の部分ですので、ジャズ理論書では「ハーモニック・マイナー・パーフェクト・5thビロウ」てやつの音使い、要はAの完全五度下Dのハーモニック・マイナーの音です。一方、パットは「C♯-F-G-A」と弾きます。2番目の音がEではなくFを弾きます。これはA7+(オギュメント)の発想、A-C#-Fの音使いですね。

 パット自身はそんなことを考えて弾ているわけないと思うのですが、ここではあえて解説はしませんが、彼の頭の中では「音楽はディミニッシュとオギュメントから形作られている」みたいなことを言っているようですから、そんなところからもこの音使いは来ているのかもしれないですね。



Pat Martino奏法研究(66)

【第7章】 グルーブの秘密(5)

 パットの「グルーブ」や「ノリ」の重要な要素となっている「繰り返し」と「規則性」について、今回は際立った例をご紹介します。

 下の譜面と動画をご覧ください。

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パット・ファンは「あー、これね!」と思うフレーズです。70年代絶頂期のマルティーノの得意フレーズで、あの名演「サニー」でも登場しています。

 このフレーズ、鉛筆書きの部分に注目で、似たようなクロマチック音列の組み合わせ「A」「B」の2つが交互に組み合わさって出てきます。「必ず交互に!」です。「A」は4拍、「B」は3拍なので合わせて7拍、7と4の最小公倍数は28拍、したがって7小節目で1回転して振出しに戻ってきます。






 下の譜面を見てください。普通はこうやるところですね。これでは、何の面白みもない感じですね。まー、悪かないですが・・・。

nori_000029.jpg


何度もしつこく言いますが、この「繰り返し」と「規則性」が彼のあの強力なピッキングに合わさって、あの最高のグリグリの「グルーブ」「ノリ」を生み出していると考えます。

 今回で一旦「グルーブの秘密」は一区切りです。

 ではでは!

Pat Martino奏法研究(65)

【第7章】 グルーブの秘密(4)

 今回はPatの「グルーブ」や「ノリ」の重要な要素となっている「繰り返し」と「規則性」について解説します。

 まずは下の譜面と動画をご覧ください。

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 このフレーズ、ロックギタリストもよく使う3連フレーズですね。彼はこのフレーズ(いくつかバリエーションがあるのですが)を「一体いつまでやるんじゃい!」てくらいまで延々とやり続けます。これを1拍の3連符でやるとリッチー・ブラックモアです(笑)。でも、パットの場合はちょっと違っていて、「8分音符の3つ取り」とでもいうのでしょうか、3つの音の頭のF#音が微妙にずれていきます。8分音符を3つで取ってるわけですから、4拍子の中でやると3と8(1小節は4拍で8分音符が8個)の公倍数、「24」、つまり8分音符24個分の3小節で1回転して元に戻ってくる感じです。

 「グルーブ」「ノリ」という意味で注目してほしいことを2つ書きますね。

 一つ目は譜面の手書きアクセント記号の部分、3連の3番目の音であるB♭音、これを少しだけ強調して弾きます。そして、2番目のG音は少し弱め。ただ動画は音を確認する意味でも多少単調に弾いています。
 ただ、パット本人も無機質な感じでやりたいときはあえてこの強弱をつけずに弾くこともありますし、逆に盛り上がって「どうだ!まいったか!」って時はあえて強調してアクセント付けたりとまちまちです。

 2つ目、今回はこれが一番のポイントなのですが、F#→Gの半音の部分で譜面のスラー記号の部分だけは、ピッキングせずにハンマリングで音を出します。そして、最大ポイントですよ!このF#→Gをピッキングとスラーで弾くことを、必ず交互にやります。そう、必ず交互ですよ!!彼の3連のこの手のフレーズは全てこういう風に弾きます。下の動画でピッキングを確認してください。わかりやすいように動きを大きくしてます。





 この「繰り返し」と「規則性」、そして「規則性の繰り返し」、これが彼の「グルーブ」「ノリ」の重要な要素のひとつです。


 次回は彼のフレーズから「規則性の繰り返し」のもう一つの際立った例をご紹介します。

 お楽しみに!

 

Pat Martino奏法研究(64)

【第7章】 グルーブの秘密(3)

前回の続きで、今度はもう少し長いフレーズで解説します。

下の譜面を見てください。前回同様に手書きの曲線は「音の強弱」や「感情移入の度合い」を表す曲線とお考え下さい。

nori_000026.jpg

 まずはどんなフレーズか弾いてみますね。下の動画です。



 分割して弾いて説明します。まずは1小節4拍目から2小節め3拍めの最初の16分音符G音までです。

 1小節目の3つ16分音符は2小節目からのフレーズの前振りのようなフレーズです。したがって、音量も小さく、一音一音はっきり弾くのではなく、ゴーストノートになってしまうくらいな感じで始めます。2小節目からいよいよ始まります。出だしのB音はアタック強めに弾きます。フレーズ全体の粒立ちをよくして、ダレた感じにならない効果があります。B音をアタック強く弾いた後のA♭音はこのフレーズの中で一番小さな音です。次のAナチュラルの音の経過音でもありますから、ほとんどゴーストノートです。そして、この音からフレーズの音程が上昇とともに音量もなだらかに上がっていき、一旦G音で一回目のピークを迎えます。下の動画を参考にしてみてください。



 G音でピークに達した音も次のB音で急降下、リセットで新たな坂を上っていきます。下の動画を参考に。



 この2回の山登り、これがかれのノリ、グルーブを生み出す秘密のひとつ目です。一回目の上りは「落ち着いた」気持ちで、そして山頂を目の前に崖から落とされた状態での2回目の挑戦、これは「ちくしょー!上ってみせる!」といった感じです。うまく説明できないですし、まだまだ自分でも弾けていると思っていませんが・・・・。ただ、「ちくしょー!」とはいっても、速度が速くなってはいけません。あくまで「感情移入」や「気持ちの込め方」の事をいってます。そして3小節目のこのフレーズの山頂であるB音(C音はハンマリングによる装飾なので、ここではB音が頂上と言ってます)を頂点として、音程が下がると同時になだらかな下降曲線をたどっていきます。下の動画を参考にしてみてください。また、3小節目のの3拍めの16分音符C-E-B-DのE音は多少アクセントをつけます。音の高低差とCは3弦5フレット、E音は2弦5フレットで異弦同フレットことも理由ですが、歯切れよく聴かせるためです。
 
 最後に、適当にそれっぽいフレーズを弾いてみますので、全体感の参考にしてください。




 まー、「言うは易し行うは難し」ってことで聴いていただければ(笑)。

 ではでは!


Pat Martino奏法研究(63)

【第7章】 グルーブの秘密(2)

 マルティーノの「グルーブの秘密」と言っても特別なことをやっているわけではないですし、ジャズというか音楽全般に当てはまることと思います。ただそんな中でも際立った部分について少し大げさに動画を使って説明します。ノリに関しては身につくまでは少し大げさなくらい強調して練習では弾いた方が良いと思いますし、その方が説明しやすいので。

 まず下の譜面を例にとって解説します。

nori_000022.jpg

何も考えず平坦に弾いたのが、下の動画です。



 別にこれでも全然悪くはありません。

 上の譜面に戻ってください。この譜面の特徴は音程が「上がって、下がって」です。パットのフレーズはこのような8分音符が切れ目なく続き、この「上がって下がって」の繰り返しがとても多いです。これをどう弾くかって言うと、下の鉛筆書きの矢印です。

 この矢印は音の強弱、あるいは気持ち(パッション?)の込め方、感情移入・・・などを表す曲線です。①②で▼は音のアタックの強い部分を表します。

 まず出だしのA音は強く弾きます。次のB音は全体からすると一番小さい音です。ゴーストノートと言っても良いくらいです。そしてB→D→Fと音程が高くなるにつれて、音量を上げていき(感情移入し)A音で最高潮に達します。アタックを強く弾きます。その後、急激に減衰します。

 多少の例外もありますが、パットのノリはこの「山・谷」「上がって下がって」をこんな感じで弾き続けることによって、強力なグルーブが生まれてくると感じます。

 これは特別なことではないと思います。音程低いところから上に向かうときには普通は自然と力が入って上のような感じで弾きますよね。特に弦楽器の人はそうじゃないかと思います。誰だってそうと思いますが、これが延々繰り返されていくことによって全体の流れ(あ、The Great Streamってやつだ!)グルーブが生まれてくるのです。

 あえて意識して弾いたのが下の動画。アクセントや強弱がわかりやすいように譜面よりオクターブ下げて、少し大げさに弾いてます。一瞬芸のように短いですからお見逃しなく。



 次回はもう少し長いフレーズで解説します。
 

 
プロフィール

武田 謙治

Author:武田 謙治
1962年生まれ 新潟県出身
小4よりクラシックギターを始める。
中学~高校時代はロック、フュージョンに傾倒。
慶應義塾大学入学と同時に、慶應ライトミュージックソサェティに所属し、ジャズの演奏を始める。
卒業後は、働きながら音楽活動を継続し、ジャズギタリスト布川俊樹氏に4年間師事。その後、自己のバンドで各種コンテストに参加する。
【主な受賞歴】
浅草JAZZコンテスト グランプリ受賞
吉祥寺JAZZコンテスト グランプリ受賞
横浜JAZZプロムナード '94 コンペティショングランプリ受賞 横浜市民賞受賞
キングレコード「日本ジャズ維新塾」 グランプリ受賞 岡安芳明賞受賞
 
1990年代は精力的に活動をしていたが、2000年に入り、十数年の間活動休止。その後は2014年夏より活動を再開。
現在は、都内を中心に、「日本一ギターのうまいサラリーマン」を目標にライブや講師として活動中。


【ギター教えます】
 僕は有名ミュージシャンではないですが、ずっと独学でやってきて「ジャズのアドリブが全くできない」とか「そこそこ弾けるようにはなったが、なんかジャズっぽくないなー」など、自分のギター・プレイに不満な方や伸び悩んでいる方の気持ちは一番わかっているつもりですし、そんな方達の手助けができるかなーと感じています。また、このブログで連載している「Pat Martino奏法研究」等について「もっと詳しく教えてほしい!」とか「一週間に一回ペースの小出しでなく、時間をかけてじっくり教えてほしい」みたいな人にも力になれるかな?と思ってます。

 東京都杉並区に住んでいますので、通える方は僕の自宅、遠方の方や通うのは大変という方にはリモートでも教えています。レッスン内容や頻度は生徒の方々の希望に合わせて決めています。

 興味のある方はメールやメッセージ、もしくはブログのコメント送信等どんなやり方でも良いのでご連絡くだされば詳細をお伝えいたします。

 それではお待ちしています!!

Mail : rymk.takeda@gmail.com

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